「これ、お願いね」とメールや文章のタイピングを指示してくる上司に悩まされていませんか?
現在ホワイトカラーの仕事において、パソコンのスキルは文章を読むのと同じくらい当たり前のことですが、自分で文字を入力できない・しない上司は意外とまだ存在しています。
新人でパソコンのスキルがない場合は、「勉強してこい!」で終わりますが、上司の場合はそう簡単には行きません。親切に教えようとしても、適当な理由をつけて学ぼうとしないというパターンも少なくないので、かなり厄介です。
パソコンを使うのが当たり前の社員にとっては、ただただ理不尽なのでストレスが溜まるでしょう。ストレスに耐えて仕事をすることも可能ですが、まずは「上司がなぜパソコンができない」のかを理解することが大切です。
理由さえわかれば対処もしやすいですから。
筆者自身は、仕事でパソコンがよくできる上司にしか当たったことがないのですが、以前の同僚や友人の上司には少なからずパソコンができないおじさんが含まれています。
筆者の過去のできる上司たちとできない上司を比較して気づいた、パソコンができない理由は次の3つです。
- 職務内容に対する認識
- 勤務時間に関する考え方
- ステレオタイプを利用した甘え
少し抽象的なので、具体例を使いながら詳しく解説してきます。
職務内容に対する認識
上司がパソコンを使えない最大の理由は、パソコンを使った業務を自分の仕事の一部だと認識していないということです。
「そのんなはずはない」
若い方はそう思うかもしれません。
その気持は痛いほどわかります。知的職業でパソコンを使わない日なんてないですもんね。
では、なぜ上司はパソコンを使うことが自分の仕事だと思えないのでしょうか。これを理解するには、家事を考えるとすごくわかりやすいです。
結婚している男性は、「ゴミ出し」や「食事の後片付け」などを奥さんに頼まれたときのことを思い出してください。
頼まれたことをさっと終わらせてリラックスしようかなと思ったときに、「ゴミの仕分けが違う」・「ここがきたない」など注意されたことはありませんか。
それに対して、「そんな細かいこと俺は知らんよ」とか「それは俺の仕事じゃない」と感じたことがある方は結構多いのではないのでしょうか。または、「やり方が決まってるなら始めから言ってくれ」というのもあるかもしれません。
ここで共通しているのは、当事者意識がないとうことです。妻からすれば家庭生活に必要な仕事の一部を夫に担当してもらっているわけですが、夫はそんなことはまったく考えていません。妻に言われたことを言葉通り処理しているだけです。
ですから、その処理の方法やタイミングが重要だと認識できません。むしろ、手伝いしたんだから頑張ったと褒めてほしいと思う男性もいるでしょう。
ちなみに筆者は、妻に頼まれたことは当事者意識をもって細心の注意を払って実行するので、夫婦円満です。
次に、この考え方を上司に当てはめて見てください。
上司は、部下に指示を出すのが仕事の一部です。それを突き詰めると、書類を作る・メールを送るなどの業務を思いつくのが仕事だと感じるわけです。そして、上司の頭の中では自分の仕事は完了しているので、具体的な実行については当事者意識は消え去っています。
結果として、単純な文字のタイピングなど自分でやるべき業務であっても部下にやらせるという方法をとってしまうわけです。
勤務時間に関する考え方
ここまでは、「パソコンを使えない上司」という大きなくくりで考えてきましたが、ここからは年齢をより限定して考えていきます。
「おじさん上司」と聞いて想像する年齢は何歳でしょうか?
感覚的な部分になりますが、この記事では2020年において50歳以上、つまり1970年以前に生まれた人たちに焦点を当てます。ちなみに1970年は、Unixと呼ばれる現在のパソコンのオペレーティングシステムの基本システムの開発が始まった時期でもあります。
ですから、現在50歳の人の人生はパソコン開発とともにあったとも言えるでしょう。
彼らは、日本のバブル期に高校・大学を卒業して就職した人たちで、バブル世代と呼ばれています。そして、彼らがパソコンを使えない・学ぼうとしない理由は、バブルの頃に形成された勤務時間に関する考え方が大きく影響しているんです。
バブルと言われても、若い世代には想像しにくいですが、当時のことを端的に表しているCMソングがあります。
「24時間戦えますか?」で有名なリゲインのCMソングの「勇気のしるし」です。
この当時は、長時間働くことが崇拝されていた時代。労働効率や労働基準法なんて知りません。会社のために働くことがすべてです。
そして、この無茶苦茶な時代に20・30代の若手としてがむしゃらに働いていた人の一部が、現在のパソコンを使えないおじさん上司たち。キャリアの土台となる若いときに長時間働きさえすればよいと刷り込まれてしまったんですね。
また、働けば働くほど会社から給料が多く支払われるわけですから、会社への盲目的な忠誠心も培われます。この異常なまでの忠誠心とコーポレートガバナンス弱さが組み合わさることで、企業のため=上司のため=仕事は上司しだいという歪んだ考え方が形成されました。
※コーポレートガバナンスは、株式会社を管理・経営するうえでの基本的な規則や体制のこと。
では、このような時代を通してキャリアを積んできた人たちが、現在のシステムで仕事をするとどうなるでしょうか?
自分のメールを送るのに部下に文字入力させるという仕事を例に考えてみましょう。
まず、部下にタイピングさせるのは明らかに非効率的ですが、時間がかかっても目的は最終的に実現します。また、自分に社会人として当然身につけているべきコンピューターのスキルがあれば存在しなかった業務と部下の通常業務との間にはまったく違いがありません。どちらも、上司である自分の指示を遂行しているからです。
間違っても非効率的な仕事のやり方が会社に無駄なコストを発生させているなどという考えも浮かばないでしょう。会社が決めた勤務時間中なら、何をやらせても同じだと考えているわけです。
ステレオタイプと甘え
おじさん上司がパソコンを使えない最後の理由は、パソコンは若手社員が使うツールであるというステレオタイプを利用した甘えです。
ステレオタイプは、上司だけがもっているものではなく、中堅や若手の社員の頭の中にもあることが問題を大きくしています。
次のようなセリフを考えてみてください。
- 「最近の新人はパソコンができない」
- 「もう少し若ければパソコン使うんだけど」
どちらも若い人ならパソコンができて当たり前だけれども、ある程度の年齢ならパソコンが使えなくてもしょうがないというステレオタイプを表しています。
そして、このステレオタイプをおじさん上司はうまく使って言い訳にしているわけです。
若手社員からすれば50代以上の社員は、自分の親世代。自分の親がパソコンを使えなければ、なんとなくそういうものかなと思っても不思議はありません。実際、2000年にWindows XPが発売されるまでは、パソコンを使うのは本当に一部の人だけだったというのも事実。ただし、当時のパソコンは、機器自体も高価なうえに操作が非常に複雑だったという現在にはない理由があります。
このように社員の多くが、年齢が高ければパソコンが使えないというイメージを共有しているので、上司がパソコンを使えなくても厳しく責められることはもありません。
つまり、ステレオタイプを利用して甘えているわけです。
仕事ができないと解雇されるアメリカにはこういうタイプの上司が少ないことからも甘えが関係していることは明らかでしょう。
まとめ
おじさん上司がパソコンを使えない、または使い方を学ぼうとしない理由を解説してきました。
まず、彼らはパソコンを使う業務が自分の仕事だという認識がありません。自分の仕事ではないので、当然部下に任せます。
ここで、効率を重要視する人であれば、2回目以降はパソコンの基本的な使い方だけでも学び対処するでしょう。しかし、この世代の上司は、バブル期に形成された業務時間に対する間違った考え方が抜けないため、効率よりも部下を道具のように使うことを選びがちです。
彼らからすれば、部下に指示をだすこと自体が仕事なので、その内容が適切であるかは関係がありません。コーポレートガバナンスの概念がないので、会社の通常業務と自分が勝手に作り出した業務の区別がつかないわけです。
また、年寄りはパソコンが使えないというステレオタイプも大きな原因となっています。ステレオタイプがより多くの社員の中で共有されることで、パソコンを使えないことに対する一種の甘えが生じています。ですからパソコンが使えなくても「しょうがない」という言葉で片付けられてしまうわけです。
では、このような上司にあたってしまった場合どうすればよいでしょうか?
筆者のおすすめは、パソコンの基本を知ることが普段の生活にも役立つこと示すこと。自分の仕事だと思っていない上司でも、自分に役に立つことであれば学ぼうとする可能性が高いからです。
旅行の予約、オンラインショッピング、一眼レフカメラでとった写真の共有など考えればいくらでもあるでしょう。ポイントは、あなたではなく上司にとってメリットがあるということ。
パソコンができないおじさん上司に悩まされている方は参考にしてください。