ググれカスという言葉を聞いたことはありますか?
Google検索すればすぐに見つけられるような内容の質問を自力で見つける努力をせずに他人に尋ねるひとをバカにした言葉です。
略して「ggrks」。
10年以上も前から使われている言葉で、その年にマスコミやウェブでよく使われた言葉を載せた現代用語辞典である『現代用語の基礎知識』の2008年版の新語に選ばれています。
ちなみに、この言葉は、面と向かって言う言葉というよりも、ネットの掲示板やQ&Aサイトなど不特定多数の人が集まる場所で使われます。
筆者は比較的最近になって知ったのですが、すごく興味を惹かれました。
というのも、ググレカスという言葉が使われている文脈を読むと、なぜ質問者が自分で検索しないのかがまったくわからなかったから。
Google検索すれば5秒もかからないで答えがでるような内容をたずねるのは、どう考えても非効率ですよね。
どのような理由が考えられるでしょうか?
- めんどくさがり?
- 自主性がない?
理由はいくつも考えられますが、この記事では、まず「ググれない」人がおちいりやすい思考・行動プロセスについて注目。そして、次にそのプロセスにおちいってしまう根本的な原因について探っていきます。
「ググれない」人の思考・行動プロセス
ググれない人の特徴はシンプルに言えば、次の2つです。
- 興味・関心の範囲が狭い、または好奇心がない
- 検索の仕方がわからない
とても単純ですが、この2つが組み合わされるとある種の負のスパイラルに入ってしまうため、高確率で「ググれない」状態になります。
別の言い方をすれば、「あまり興味のない事柄について技術的困難を乗り越えてまで知りたい・理解したいとは思わない」ということ。
「ん?」と思った方、そのとおりです。
よく考えれば、これってだれにでも経験がありますよね。要は程度の問題なんです。
例えば、肉を最高の状態で食べたいと思ったとき、タンパク質の温度による状態変化を論じた学術論文を検索して読みますか?
肉料理で温度管理が重要であることは何となく分かると思いますが、通常そのことについて深く追究したいとは思はないでしょう。
でも周りの人がその話をしていれば、気軽に最適な温度は?と聞きたくなりますよね。
まさに、自分の時間を使ってまで調べるほどには興味はないけど、知らないと話についていけないというときです。
以上の内容から「ググれない」人の具体的な思考・行動プロセスは次のように表現できます。
- 興味・関心の範囲が狭い
- だから検索する回数がそもそも少ない
- 時間をかけて調べる気がない
- でも、たまに調べる
- 本文より広告が多いアフィリエイトサイトが表示される
- だから知りたい情報はすぐには見つからない(スキルが必要)
- 時間がかかる
- めんどうなのでさらに検索しなくなる
- だから検索のスキルが上がらない・習慣がつかない
この1から9のプロセスは生活の中で何度も繰り返されるので、ググれない人の中で習慣化されます。
結果として、自分で検索する習慣のある人からすれば瞬時に見つけられるような情報でも、ググれない人にとって検索して探す方法は敷居が高いわけです。
ネットで効率的に検索をする方法について興味のある方は、こちらの記事を参照ください。
では、ググれない人の思考・行動プロセスについてわかったところで、そもそもこの状態になってしまう根本的な原因について見ていきましょう。
「ググれない」人が増える根本的な原因
ググれない人が増加する要因は、単純にインターネットをテレビと同じように使っている人が多いから。
言い換えれば、多くの人がインターネットを受け身のエンターテイメントとして使っているということです。
テレビは電源をつければ24時間いつでも放映しているので、視聴者はリモコンでチャンネルを選ぶだけ。しかも日本は基本的に民放の5局とNHKを合わせて6チャンネルしかありません。
最近はテレビを見ない人が増えているとされていますが、これって単純に媒体がテレビからインターネットに変わっただけのことなんです。
媒体が変わっても、人間の行動はあまり変わりません。いつも、なんとなくテレビを見ていた人たちは、インターネットの時代になっても常に受け身です。
ですからGoogle検索の精度が高くなっても、検索をして自分の知りたい情報を得るという能動的な行為は選択肢の中にありません。
実際、この受け身でインターネットを使う人たちを象徴しているのが、次の2つのサイトです。
- Yahoo! JAPAN
- まとめサイト
Yahoo! JAPANの2019年11月の報告によれば、Yahoo! JAPANはメディア全体で月間ページビュー数が約700億の超人気サイト。
総務省のインターネット利用者数統計によると日本のネットユーザー数はだいたい約1億人なので、すべてのユーザーが月に7回もサイトを利用する計算です。
また、まとめサイトもかなり人気のようで、検索すると必ず上位に表示されますよね。
どちらのサイトにも共通しているのが、検索をしなくても情報が簡単に手に入るように他社・他人が作ったコンテンツをひとまとめにして表示している点です。
ポータルサイトとまとめサイトでは表示のスタイルは異なりますが、情報が絞り込まれた上でひとまとめになっているので、ユーザーはタイトルから興味がある記事を選ぶだけ。
テレビとの違いは、選択する方法がテレビのリモコンの代りにスマホの画面になっただけです。
実際、Yahoo! JAPANの調査によると、Yahooを使っている理由の1番は「日常」だからだそうです。多くの人がYahooのトップページをなんとなく開くという行動を日常的に行っているということがわかります。
ユーザー側からすれば、検索の手間をかけずに、おもしろい・役に立つ情報をYahooの担当者が時間をかけて選んだ記事を読めるのですから当然といえば当然ですよね。
以上から、インターネットを受け身で使っている人が大量にいることがわかっていただけたと思います。
では、そのような使い方がどのようにググれない人の行動とつながっているのかを具体的に見ていきましょう。
受け身でインターネットを使って何が悪い?
厳選された内容から選択して読むこと自体は、完全悪というわけではありません。
ただ、このように習慣的に限られた選択肢の中から興味のある・なしの基準だけで記事を読んでいると、興味・関心の範囲は狭くなるということです。
というのも多くのサイトが広告で成り立っているので、ユーザーがクリックしない内容は自然と作られなくなるから。
インターネット広告では、ページビュー(PV)数が重要になるためPVを稼げる内容だけを厳選する戦略がとられます。
そうすると、ネットはテレビと同じで暇人のほうが利用時間が長いので、彼らに向けた芸能ネタや政治家のスキャンダルなどばかりになるのです。また、タイトルだけがおもしろい内容がスカスカの記事も同様の理由で人気です。
そして、これが「ググれない」人の具体的な思考・行動プロセスにつながってきます。
すでに解説した9つの「ググれない」人の具体的な思考・行動プロセスに加えて、もう1つのサイクルが生まれます。
くだらない内容のほうがPV数を稼げる
=>そのような内容の記事が大量生産される
=>よくクリックされる
=>Googleで評価される
=>良い記事は埋もれる
=>知りたい情報はすぐには見つからない
興味の範囲が狭くなり、情報はくだらない内容に埋もれて見つけづらくなり、検索をしないので基本的な検索スキルも身につかない。
完全な悪循環ですね。
ではどうすればこの負のスパイラルを断ち切れるのでしょうか?
まずは、自分で検索してみることです。
ポータルサイトのトップページにある記事に書かれている内容から、検索キーワード選び、その記事を探せるかどうかやってみるのもよいと思います。
まとめ
自分で検索しない、またはできない人が増加する理由について解説しました。
まず、検索できない人が持つ特徴として、興味・関心の範囲が狭いこと、そして検索スキルが低いことを上げました。
この2つが相互に影響し合うことで、検索するという能動的な行為への敷居が高くなる悪循環におちいりやすくなります。
次に、検索をしない人が増える根本的な原因として、ネットをテレビの延長として使う、受け身のユーザーが多いことを指摘しました。その結果として、日本ではYahoo! JAPANに代表されるポータルサイトとまとめサイトに人気が集中しています。
ポータルサイトやまとめサイトを使うこと自体は問題ないのですが、インターネットの利用方法がそれだけに限定されると負のスパイラルにおちいりやすいので注意が必要です。
インターネットはサイトを作る側の意向も当然ありますが、ネット広告が巨大ビジネスに成長した現在、ユーザーのネットの行動がそれ以上に大きく影響します。
普段ポータルサイトでニュースを読んでいる方も、たまには検索して興味のあるコンテンツを探してみてはいかがでしょうか。