インターネット上で公開されるウェブサイトは年々増え続け、2019年現在20億に迫っています。より多くの言語や種類のサイトが増えることは素晴らしいことですが、限られた時間の中で実際にユーザが閲覧できるサイトの数は増えないため、特定のサイトに人気が集中することは避けられません。当然のことながらどのサイトに人気が集るかは国や地域そして言語に少なからず影響を受けます。そこで、日本を含む16カ国のウェブサイト・アクセスランキング・トップ25を分析して、世界と日本のインターネット利用状況について調べました。
より深く理解するために、以下の4つのシリーズに分け、それぞれの視点から世界のインターネットの状況について分析していこうと思います。
- ウェブサイトのカテゴリごとの分析(この記事)
- 国ごとの特徴の分析
- 会社・資本ごとの分析
- 2015年からの変化の分析
この記事はカテゴリごとの分析に重点をおいて、結果を紹介します。
調査した国
経済レベルと人口及び地域を考慮して以下の16カ国をアレクサ・インターネットのランキングを使って調査しました。
アジア&オセアニア
- 日本
- 中国
- インドネシア
- インド
- オーストラリア
中東&アフリカ
- サウジアラビア
- 南アフリカ
ヨーロッパ
- イギリス
- フランス
- ドイツ
- オランダ
- スウェーデン
- ロシア
北南米
- カナダ
- アメリカ
- ブラジル
概要
1.ランクインしたカテゴリ
すべてのサイトを以下のカテゴリに分けました。その他・不明のサイトには、分類できないサイトの他、1カ国のみにランクインしたカテゴリをまとめるかたちとしました。
- 検索エンジン(仕事検索も含む)
- SNS
- 動画
- 情報データベース
- 広告・クラシファイド
- ストリーミング
- クラウド型サービス(SaaS等)
- ニュース専門サイト
- メール・メッセージ
- ファイル共有
- Eコマース
- ポータルサイト
- コミュニティサイト
- 金融関連(銀行・支払い等)
- ポルノ
- 政府関連
- ブランド
- ブログ
- 不動産
- その他エンターテインメント(動画、ポルノ、映画、ゲーム以外)
- その他・不明
2.各国の人気トップ3
今回は、以下の順位の国がほとんどとなりました。
- Google.com
- YouTube.com
- Google.国別名(Google.co.jpなど)
この結果と大きく違うのは、3つともブロックされている中国とインドネシアだけです。独自路線気味の日本も3位はYahoo Japanがランクインしていますが、1位と2位は同じです。ロシアは2位が独自のSNSですが、1位Google、3位YouTubeの順番になっています。
中国は全てが独自のサイトで、Eコマースサイト、検索エンジン、メッセージサイトの順番です。
カテゴリ別の結果と考察
1.検索エンジン
Googleに敵なし、中国にも進出へ
Google.comは、中国とインドネシアを除く16カ国中14カ国でトップを独占しました。Google.comの他にもGoogle.co.国名のサイトが3位に来ている国が9カ国もあり、検索エンジンのカテゴリだけでなくインターネット全体でも圧倒的な人気を誇っています。
日本でも長い間アクセスランキングのトップを守ってきたYahoo Japanを抜き、とうとうGoogleがトップにたっています。日本と同様に自国のサイトが強かったロシアでもロシア製検索エンジンのYandexを抜き去りました。そして、最大の驚きは、Google.com.hk (Googleの香港サイト)が中国のトップ25にランクインしたことです。外国のサイトで唯一のランクインです。
検索エンジンカテゴリでGoogle.comが1位でない国は中国だけで、中国の検索エンジンの1位は相変わらず中国のGoogleと呼ばれるBaidu.com(百度)です。Baiduは日本でも13位にランクしていて、世界全体でも4位につけています。
Yandexは自国でGoogle.comに抜かれたものの、世界で49位、ロシアで4位、オランダで9位につけています。
2.SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)
人気に明暗。アメリカとロシア生まれのSNS。
SNSはインドネシアを除く16カ国中15カ国でランクインしました。
ケンブリッジ・アナリティカなど個人情報流出が大きな問題になったFacebookは、インドネシア、ロシア、中国を除く16カ国中13カ国でランクインしました。他のカテゴリと比べてSNSの全体の人気が下がっていることもあり以前ほどの人気はないものの、このカテゴリ内では、圧倒的に人気があります。
日本では何かと話題になるTwitterですが、他国ではFacebookほどの人気はなく日本以外ではアメリカ、カナダ、インド、サウジアラビアの4カ国のみのランクインでした。インスタの愛称で日本に浸透しているInstagramも数カ国のみランクインとなりました。
今回アメリカ生まれのSNSが軒並みランクを落としたのに対し、ロシア生まれのSNSの躍進には目をみはるものがあります。
ロシアのFacebookと呼ばれるVk.comは若いユーザの中で人気を集め、ロシア連邦の外でもユーザを増やしランクインしています。また、Ok.ruというまた別のロシア生まれのSNSもオランダ・ドイツの2カ国でもランクインしています。
Vk.comのランク
- 世界 20位
- ロシア国内 2位
- オランダ・ドイツ・フランスの3カ国 トップ10
- イギリス トップ20
3.動画
YouTubeの人気は圧倒的。Twtichの急成長も見逃せない。
Youtubeは、ブロックされている中国を除く15カ国中13カ国で2位にランクを上げました。2位を逃したインドネシアでも4位、ロシアでも3位につけています。
SNSサイトと同じように、Youtubeも幼児愛者の広告などで、広告主が広告を引き上げるなどの問題が起きましたが、ユーザの間での人気は高まり続けているようです。
Youtube以外では、Amazonが所有するゲームに特化したYoutubeのような動画配信サイトのTwitch.tvも人気を高めています。アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダの7カ国でランクインしています。トップ25は逃したものの、オーストラリア、ブラジル、ロシアのトップ50にランクインしているので、世界のトップ25に入るのも時間の問題でしょう。
アメリカ製以外の動画サイトは、日本、南アフリカ、インドネシア、中国でランクインしました。日本のサイトはニコニコ動画です。
4.情報データベース
オンライン百科事典はWikipedia一択。ソフトウェア開発者なら話は別。
このカテゴリは、体系化された情報をオンラインのデータベースを通じて提供するサイトです。
知的データベースに関しては、Wikipediaのほぼ独占状態で、中国とインドネシアを除く16カ国中14カ国でランクインしています。Wikipediaは、非商業サイトで世界全体のトップ10入りしている唯一のサイトでもあります。
サウジアラビアを含む中東では、Wikipediaの他にヨルダン生まれのアラビア語話者のためのmawdoo3.comというWikipediaと同様のスタイルのサイトが人気を集めています。
中国では、ソフトウェア開発が盛んになってきていることもあり、ソフトウェア開発者のためのcsdn.netというサイトが13位にランクインしました。このサイトは、世界ランキングで日本の3位のYahoo Japanよりも上位にランクしているので、非常に人気のあるサイトであることが実感できます。インドも中国と同様で、ソフトウェア開発のQ&Aサイトのstackoverflowが人気を集めています。
5.広告・クラシファイド
西欧はクラシファイドサイトがお好き
日本ではあまり馴染みのないカテゴリですが、個人を主に地域・目的別に分類された広告を掲載するサイトです。
ランクインしたのは、16カ国中8カ国です。検索や動画サイトと違いこのカテゴリで一番有名なアメリカ生まれのCraigslistが独占することはなく、それぞれの国に別々のサイトがランクインしているのが特徴です。また、このカテゴリには、アジアの国でのランクインがないことも特筆すべき点です。
主要なサイトは以下のとおりです。
- Kijiji (カナダ)
- Gumtree (イギリス)
- Olx (オランダ)
- Leboncoin (フランス)
6.ストリーミング
世界中がストリーミングに熱狂
ここ数年で一番飛躍したのが、月契約することで自由に映画・ドラマ・音楽にアクセスが可能になるストリーミングのカテゴリのサイトです。16カ国中13カ国でランクインがあり、ランクインしなかったのは、日本、インドネシア、中国の3カ国のみでした。
このカテゴリは、Netflixの人気が圧倒的で、ストリーミングがランクインした13カ国中ロシアを除く12カ国にランクインしました。ロシアは、他のカテゴリと同様独自路線が強いため、自国のストリーミングサービスが2つランクインしています。
ちなみにテレビにお金を払って見る習慣のない日本もNetflixはトップ50までにランクインしているので、来年にはトップ25まで上がってくる可能性は高いです。
また、今回トップ25には入らなかったものの音楽のストリーミングサービスのSpotifyもアメリカ、イギリス、スウェーデンの3カ国でトップ50にランクインしています。
7.クラウド型サービス(SaaS等)
もはやクラウドなしの生活はありえない
ストリーミングの他に人気を急激に高めているのがクラウド型サービスです。このカテゴリには、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)などインターネットを通じてソフトウェアやサーバーの計算能力をサブスクリプション(購読)の形で提供するサイトが含まれています。
1番人気は、SaaSの代表格とも言えるMicrosoftのオフィスです。英語圏のほかサウジアラビアでもランクインしています。オフィス以外のSaaSでは、Dropbox(クラウドストレージ)とSales Force(顧客関係管理ソフト最大手)のサイトともランクインしています。
このカテゴリで特に興味深いのが、Instructure.comとVklass.seという教育関連のSaaSとAmazonのクラウドサービスのAWSがランクインしていることです。
教育分野、特に子供の教育は比較的保守的な分野なので、画期的なソフトが開発されてもなかなか浸透しないという傾向があります。その中で、アメリカとスウェーデンの2カ国で2つのサイトがトップ25ランクインしているのは驚きです。特にスウェーデンは上記の両方のサイトがランクインしていることを考えると、かなりの割合の学校で使われていることが推測されます。
AWSは、公共クラウドと呼ばれる他社にクラウドサービスを提供する事業としては圧倒的な世界シェア(30%~)を誇り、売上は年間で3兆円を超えるサービスです。日本の会社で3兆円以上売り上げる会社は2019年では50社程度であることを考えると、その規模がおわかりいただけると思います。ただ、AWSの主力は他社へのサービスがメインなので、今回のランクインが意味するところは、クラウドサービスが本格的に個人の生活のなかに浸透し始めているサインなのではないでしょうか。
8.ニュース専門サイト
ニュースは専門サイトで読むのが世界標準
トップ25にニュース専門メディアがランクインしていないのは、カナダ、フランス、オランダ、ブラジル、日本の5カ国です。トップ50まで含めてもランクインがないのは日本のみで、他の国は国営・私営の違いはありますが以下のような有力メディアがランクインしています。
- CNN (アメリカ)
- BBCとGuardian (イギリス)
- ABC (オーストラリアのNHK)
- Figaro (フランス)
- Xinhua News (中国のNHK、新華)
- RIA (ロシアのNHK)
- Aftonbladet (スウェーデン、北欧最大の新聞の1つ)
日本でニュース専門サイトがランクインしない傾向は以前から続くものですが、理由としては以下の4つが考えられます。
- ポータルサイトでニュース、天気、エンターテイメントなどすべてが無料で見られるため、あえて専門サイトに行く理由がない
- ポータルサイトで読めないような情報をお金を払っても読む人は、紙媒体を好む世代が多い
- 新聞社のサイトは有料の記事がほとんどで、無料の記事もユーザ登録の必要があり敷居が高い
- 日本のメディアの主たる動画配信の方法がテレビ
9.メール・メッセージ
Webメールはまだまだ人気
Webメールやインスタントメッセージのサービスを提供するサイトのカテゴリです。このカテゴリのサイトは、インドネシア以外の16カ国中15カ国でランクインしました。
GmailはGoogle.comのサブドメインからアクセスするためこのカテゴリからは除外されています。
主要なサイトは以下のとおりです。
- Live.com (アメリカ)
- Whatsapp.com (アメリカ)
- Mail.ru (ロシア)
- Qq.com (中国)
Live.comは、12カ国、ロシアのMail.ruはドイツとオランダを含む3カ国で利用されています。
また、Facebookが2014年に買収したメッセージサービスのWhatsappもブラジルとインドにランクインしました。日本には、中国のテンセントが提供するQq.comがランクインしました。
10.ファイル共有サイト
ファイル共有サイトの終わりは近い
映画・音楽のストリーミングや月契約方式のソフトウェアが主流になってきたためか、ファイル共有サイトは年々ランクを落としています。
今年は、南アフリカ、スウェーデン、オランダの3カ国でランクインしました。太平洋の島国トンガのトップドメインのサイトが2つ、その他が2つとなっています。どのサイトもBitTorrent形式のP2Pサイトです。
以上世界インターネットアクセスランキングのカテゴリごとの分析結果の紹介でした。みなさんはどの点が一番驚きでしたか?筆者は、ロシアのサイトがヨーロッパで浸透してきていることでした。アメリカの企業がヨーロッパで独占禁止法で訴えられたことが影響しているのか、または、ロシア語話者の数が増えているのかは不明ですが、非常に興味深いところです。また、Googleがブロックされているはずの中国でGoogle.com.hkがランクインしたことも興味深い結果でした。