「1000万トン」これが日本の家庭からでる生ごみの量です。
これは日本のお米の年間消費量を上回る量です。生ごみは80%くらいが水分なので、焼却炉で燃やすときに大量のエネルギーが必要となり大きな環境負荷がかかります。
日本は埋め立て地が足りないため、ゴミのほとんどを焼却処理している世界一の焼却炉保有国。少しでも生ごみを減らすこができれば、環境にやさしいだけでなくゴミ処理場を管理する自治体の支出削減にも貢献できて一石二鳥ですよね。
そんなゴミ問題を家庭で簡単に取り組める「コンポスト」でどれくらい生ごみが減らせるのかチャレンジしてみました。今回はより手軽で費用のかからないダンボールコンポストを紹介します。
コンポストってなんだ?
コンポストは日本語で言えば堆肥(化)で生ごみ等を人工的に微生物分解し土に戻せる状態にすること。
処理過程で大量のエネルギーや埋立地を必要とする焼却や埋め立て処理と比べると、コンポストは有害分質を排出することもなく環境にやさしいごみ処理方法です。
用意するもの
コンポストに必要な材料は次の通りです。
- ダンボール箱 (25~40リットルくらい+底敷分)
- ふた用の布又はビニール
- ピートモス15リットル
- もみ殻くん炭10リットル
- 温度計
- スコップ
- ガムテープ
どれも簡単に用意できる材料ですが、ダンボール箱のサイズと、聞き慣れないもみ殻くん炭・ピートモスについて少し補足説明します。
ダンボール箱のサイズ
ダンボールには、最低ピートモスともみ殻くん炭を合わせて25リットル分の基材が入ります。フタの部分も使うため、最終的な容量は25リットルを超える計算です。
基本的に容量が25リットルを超えればどんなダンボールでも構いませんが、できれば背の高い物より幅広の物を選びましょう。生ゴミを混ぜやすく、空気に触れている面積が広いためニオイが発生しにくくなるからです。
もみ殻くん炭
もみ殻くん炭は、もみ殻、つまりお米の1番外側の茶色い皮の部分を、いぶして炭化させたもの。見た目は粉状にした炭で、ホームセンターや園芸用品店で、土壌改良材として販売されています。
もみ殻くん炭を使う理由は、炭の消臭効果によるコンポストのニオイ対策と、最終的な堆肥の炭素量の調整です。
ピートモス
ピートモスは、コケ類が堆積した泥から作られる土壌改良材で、もみ殻くん炭と混ぜ合わせることでコンポストの基材となります。ニオイ対策が主な用途のもみ殻くん炭と違い、コンポスト作成に必須。
ホームセンターや園芸用品店ならどこでも購入できます。
コンポスト作成の手順
次に説明する1から5のステップを実行すると、数ヶ月でコンポスト(堆肥)が完成します。
1.ダンボールを箱型に組み立てる
底をガムテープで閉じ、ふたの部分も立てとめる。水分で底に穴が空きやすいので底にもう一枚分ダンボールを敷きます。箱がきちんと閉じていないと土がもれるだけでなく、虫が入ってくるので注意。
2.ピートモスともみ殻くん炭を混ぜる
コンポストの基材となるピートモスともみ殻くん炭を3:1、または3:2の割合でダンボールに入れてよく混ぜる。もみ殻くん炭を使わない場合は、基材の量が少なくなり混ぜづらいのでピートモスの量を増やしてください。
3.1日1回生ごみを投入して、よく混ぜる
生ごみが露出していると匂いも虫も出やすいので、底の方にしっかりと埋めてください。十分にかき混ぜたら、布またはビニールでふたをして保存します。
1日の投入量の目安はキッチンシンクにある三角コーナーに軽く一杯ぐらいです。
4. ステップ3を2-3ヶ月繰り返す
始めは温度が上がらず失敗したかなと思いますが、1週間ぐらいすると徐々に温度が上がってきます。
5.コンポストの完成
分解の速度が遅くなり基材がもっさりした感じになってきたら生ごみの投入をやめて、3-4周間程度生ごみが分解されるまで混ぜつづけます。
生ごみの投入をやめると基材が乾燥するので、霧吹きスプレーで水分補給してください。完成したコンポストは土と混ぜて庭やポットで使えます。繊維質のものが多少残ってもかまいません。
コンポストの中身
コンポストは最終的に堆肥として土に戻すため、ゴミならなんでも入れても良いというわけではありません。堆肥としての質と発酵分解の速度を考慮する必要があります。
炭素と窒素の割合は25~30:1に保つのがコンポスト成功の秘訣。
炭素の量が多すぎると発酵が遅くなり、窒素の量が多いとアンモニアが発生して匂いがきつくなります。
一般に野菜の切れ端や剪定したばかりの草など緑のものは窒素量が比較的多く、ともろこしの芯や枯れ葉などの茶色いものは炭素の量が多いです。
次にあげる炭素含有率の高い茶色系を基材として(ピートモスの炭素窒素比率は58:1 )、窒素含有率の高い緑系の生ごみ(20-30:1)を混ぜることで発酵を促します。
温度が低いうちは生ごみを小さめにカットしたほうが発酵が早く進みますが、温度が上がったら気にせずにどんどん投入してかまいません。コンポストに有害なものと分解されづらいものも以下にリストしました。
茶色系(高炭素)
- ピートモス
- もみ殻くん炭
- 枯れ葉
- 枯れ枝
- 新聞紙(シュレッダー済み)
- 木の削りくず
- わら
緑系(高窒素)
- 野菜・果物のかす
- コヒーのかす
- 肉・魚の残り
- ご飯の残り
- ガーデニングで剪定した葉など
コンポストに向かないもの
- 塩分を含むもの
- ソースがかかった残飯
- カラープリンターで印刷した紙
- 腐ったもの
- 玉ねぎやともろこしの皮など繊維が多く乾燥したもの
- アボガドなどの大きな種
- 貝類の殻
- 骨
- 油(廃油を入れると良いと書いてあるサイトもありますが、基材がベタベタになるだけであまり効果なし)
コンポストの温度について
コンポストを始めた時に上手く行っていると簡単に感じれるのが基材の温度変化です。
条件がそろえば40~50度くらいまで上がることもありますが、温度がほとんど上がらないで途中でやめてしまう人は少なくないと思います。
筆者もあまり温度が上がらず心配しましたが、温度はあくまでも生ごみの分解の速度の指針なので低い温度でも発酵はゆっくり進むので心配ありません。以下の図が筆者が観測したコンポストと室内温度及びゴミの投入量の推移です。温度は毎朝ゴミを投入する前に計測しました。
実験してわかったことは、次のとおりです。
生ごみの投入量と温度は比例しない
投入量の増加とコンポストの温度上昇の相関性は見られないが、投入量が0になると次の日の温度が下がる。グラフのオレンジの点を参照。
温度の上昇には動物性タンパク質が有効
コンポストの温度を上げるには、野菜や果物などの植物性のゴミよりも魚介の腸などの動物性タンパク質が必要。グラフの紫の点で示す日の前日はイカや魚の腸を含む生ごみを投入している。
液体は温度上昇に影響しない
廃油、米のとぎ汁、砂糖水などの液体による温度上昇は観測できなかった。
コンポストの設置場所の温度の影響大
設置場所の温度に敏感に反応するので、外に置く場合はダンボールを2重にするなどの工夫が必要。
コンポストの匂いについて
ダンボールでコンポストをやるときに一番心配なのが匂いだと思いますが、なぜ臭うのかを理解して対処すればまったく心配ありません。
実際、筆者はベランダではなく室内に設置していましたが、特に臭うこともありませんでした。
匂いは酸素を嫌う嫌気生物が食べ物を分解するときに発生するアンモニアが原因。嫌気生物は名前の通り空気を嫌うので、コンポストに十分な空気を送ることが重要です。以下の3点に気をつけてください。
よく混ぜる
ダンボールの底にたまった基材は酸素不足になりがちなので、混ぜるときは底から十分に混ぜてください。
適切な水分量をたもつ
水分が多いと空気の流れが遮断されるので、匂いがきつくなることがあります。湿度が低すぎても分解が進まないため、基材が乾燥するのも好ましくありません。
目安は、コンポストを握ったときに軽く手の形がつく、または絞ったスポンジの湿り具合です。何度か触って試すと、ある程度基材の色でも判断できるようになります。
生ごみの投入量
コンポストの窒素の割が多くなると匂いが出やすくなります。投入量を減らすか、炭素の割合が大きいもみ殻くん炭やシュレッダーにかけた新聞紙などを加える方法も有効です。
コヒーのかすは窒素の割合は多いですが、脱臭効果があるのでおすすめ。
ダンボールコンポストのまとめ
ダンボールを使って簡単にコンポストを作る方法と注意すべき点について解説しました。
用意する材料も少なく、やり方もシンプルですよね。
1番のポイントは根気強くやり続けることです。
どうしても温度が思ったように上がらなかったり、忙しかったりすると続けるのが難しいと感じることもあるかもしれません。しかし、やり続ければ、確実にゴミの量が減らせます。
ちなみに筆者は2ヶ月で約14kg分の生ごみをコンポストで処理しました。これは体積で言うと都内で使う30リットルの半透明のゴミ袋一杯分に相当し、年間ではゴミ袋6つ分のゴミを処理できることになります。
1人でこれだけの量を処理できるということは、2人以上の世帯ではさらに多くのゴミを減らせるはずです。
それほどの大量なゴミを処理するとダンボールから溢れてしまうのではないかと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、生ごみはほとんどが水分なので最終的なコンポストの量は最初に入れた基材の量とほとんど変わりません。
大量でなくともでき上がったコンポストを使う場所がないと処理に困るので、始める前に考えておく必要があります。
同時期にベランダで鉢植えの植物を育てると便利かもしれません。
ぜひ試してみてください。